英彦、明男を突き放す。
ふっとぶ明男。
明男「やっぱり、俺を殴る勇気はなかったか」
英彦「もういい。何も言うな。これは俺たちの問題だ」
明男「…嘘だよ」
英彦「あ?」
明男「今、話した話は全部、嘘だ」
英彦「なんだと?」
明男「全部、俺の作り話だって言ってんだよ」
英彦、明男を殴る。
明男、今度は、ぶっとぶ。
倒れている明男を、見つめる英彦。
やがて、明男に手を差し出す。
英彦、その手にすがって起きる。
間
明男「・・・なんで、わかった。」
英彦「お前は、いつも一言多い。」
明男「・・・え」
英彦「嘘だ。なんて、言わなきゃな。」
明男「・・・」
英彦「最初から、バレバレだったんだよ。」
明男「・・・なんで」
英彦「知ってるか? お前が嘘つく時、必ずやる『癖』」
明男「?」
英彦「ピコピコピ♪」
明男「は?」
英彦「奥様は魔女だよ。ピコピコピ♪」
明男「なんだよ」
英彦「知らないのか?奥様は魔女。」
明男「知ってるけど・・・あ。」
明男、鼻を押さえる。
英彦「そ、鼻がな。ピコピコピ♪ってな」
明男「・・・」
英彦「だから、お前が、佐知子とのセックスの話してたとき、ずっと、鼻が動いてたから、俺は「この話しは嘘だって」思ってたんだ。」
明男「でも、お前」
英彦「そりゃ、たとえ嘘でも、自分の妻をあんな風に言われて、気持ちのいい夫なんているか?」
明男「・・・」
英彦「だいたい、ブルネリなんて、歌うほど、佐知子は馬鹿じゃない」
明男「・・・ブレネリだよ」
間
英彦「だけどさ、最後にお前が「「全部、俺の作り話だって言ってんだよ」
って、言ったとき」
明男「・・・」
英彦「お前の鼻がさ、今までで、一番、大きく動いたんだ」
間
英彦「あいつが、何をお前にいったのかは知らないけどな。あいつは病気なんだよ。」
明男「病気?」
英彦「あいつの病気を治すために、俺は・・・」
間
英彦「あっという間だったろ」
明男「・・・」
英彦「そうなんだ。「ただ、したい」それだけなんだ」
英彦、頭を抱えてうずくまる。
英彦「おれ、どうしていいか。わからない。」
明男「お前・・・」
英彦「そうだよ。もう、佐知子から聞いただろ」
明男「(頷く)」
英彦「あんなコトやったのも、全部、佐知子の為だ。佐知子の・・・」
明男「英彦・・・」
英彦「おれは、あいつを・・・」